知っておきたい「誤嚥性肺炎」の予防法

知っておきたい「誤嚥性肺炎」の予防法

高齢者のQOL低下、さらには死亡の要因となる誤嚥性肺炎。誤嚥性肺炎の予防には口腔ケアが重要です。実際、口腔ケアを実施した人は発症率が約4割減少したという報告もあります。

口腔ケアの実施には歯科衛生士さんによるプロケアやセルフケアの指導が欠かせません。

今回は『歯科衛生士さんが覚えておきたい誤嚥性肺炎』についてお伝えいたします。

 

そもそも誤嚥性肺炎とは?

誤嚥とは、口から摂取した食物が食道ではなく気道に入ってしまうことを指します。通常は反射機能が働いてむせて気管から食物が排出されるのですが、高齢者では反射機能が衰えていることがあります。むせの自覚症状がないこともあるのでさらに注意が必要です(不顕性誤嚥)。

高齢者や寝たきりの患者さんなどで口腔内の清潔が十分に保たれていない場合、口腔内で肺炎の原因となる細菌が増殖します。肺炎の原因菌が増えた口腔内のだ液が気道に入り込むことで起こる肺炎が誤嚥性肺炎です。

主な症状
誤嚥性肺炎では「発熱」「激しい咳」「呼吸の苦しさ」などが主な症状として現れます。風邪と間違えやすいのですが、高齢者の場合は誤嚥性肺炎の可能性を考える必要があります。
その他にも「元気がない」「食後にぐったりする」「ぼーっとする」「夜中に咳き込む」といった様子も肺炎の可能性があるので注意が必要です。もし、そのような症状を訴える患者さんがいらっしゃったら、かかりつけ医院の受診をおすすめしてあげるのが良いかもしれません。

 

誤嚥性肺炎は口腔ケアで予防できる!

誤嚥性肺炎は口腔内の清潔が保たれていないことが原因の一つとなります。そのため、日常から口腔ケアをしっかり行うことで予防効果が期待できます。

参照:8020推進財団 はじめよう口腔ケア~健康なお口で歯つらつ生活~

専門的口腔ケアを実施した場合に明らかに口腔内の細菌数が減るという報告があります。また、継続した口腔ケアにより、誤嚥の予防にも繋がるという報告もあります。

参照:8020推進財団 はじめよう口腔ケア~健康なお口で歯つらつ生活~

口腔ケアを実施した人は誤嚥性肺炎の発症率が4割ほど低下したという報告もあります。このように誤嚥性肺炎の予防には口腔ケアが効果的です。

 

誤嚥性肺炎予防のためには歯頸部と歯間部に特に注意する

誤嚥性肺炎は口腔内の細菌が原因となるため、プラークを残さないことがとても重要です。そのためのケアのカギはやはり歯頸部と歯間部です。

歯ブラシは毛先が極細なものを使うと、狭い歯間部や歯周ポケットにも毛先が到達するので磨き残しが少なくなります。また、歯間ブラシやフロスを使うのも効果的です。

機械的コントロールだけでなく、IPMPやCPCなどの殺菌剤が含まれている歯磨剤・洗口液を使った化学的コントロールを併用するとさらに効果的です。

患者さんごとに最適な歯ブラシの選び方や殺菌剤の特徴については下記に詳しくまとめていますので、気になる方はチェックしてください。

【保存版】患者さんごとに最適な歯ブラシが見つかる歯ブラシ一覧表

【保存版】歯間ブラシの「最適なサイズの選び方」と「患者さんへの指導法」

【保存版】歯磨剤・洗口液で配合されている成分とその特徴

 

まとめ

誤嚥性肺炎は口腔内の清潔を保つことで予防効果を期待することができます。

そのためにも日々のセルフケアを患者さんにしっかり実践していただくことが必要になります。患者さんの背景などをしっかり理解し、患者さんごとに最適な歯ブラシ・歯間ブラシ・フロス・歯磨剤・洗口液などを用いることで発症のリスクを抑えることが、患者さんのQOL低下を防止することに繋がるのではないでしょうか。

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