発見!輝く歯科衛生士さん vol.5 ~健康創造型歯科医療で積極的な予防を目指す馬見塚デンタルクリニック~

発見!輝く歯科衛生士さん vol.5 ~健康創造型歯科医療で積極的な予防を目指す馬見塚デンタルクリニック~

『なぜ、できなかったのかを聞くようにしています』(前原さん)

――前原さんは新人教育担当ということですが、難しいなと思うことはありますか?

ミスに対して何かしらのフィードバックを新人さんにすると、その場では「はい」と言ってくれますが、また後日同じミスが起こることがあります。私も新人の頃はそうだったのかなと思っていますが、その時に「あ、伝わっていないんだな」という気づきが得られます。

自分の意図が新人さんに伝わっていないことに自分自身も気づいていない。伝えることの難しさを実感しています。

そのような場合は、何度も同じことを伝えるようにしています。同じことを言われることで身についていきますし、新人の今なら何でも受け入れられる態勢なので、初めから医院の理念・方針などを伝えるようにしています。

――患者さんにも伝えることの難しさを感じることはありますか?

もちろんあります。私が提案をして、患者さんが「それならやってみるよ」とおっしゃってくださいますが、3ヶ月後にメインテナンスで来院された際にチェックするとできていないことがあります。できていないのには何か理由があるはずです。

忙しくてできなかったのか、やりたかったけど何か理由があったのか、すすめられて買ってみたものの、面倒になってしまったのか。できなかった理由を聞くようにしています。患者さんを責めるのではなく、会話の中で「いつもより忙しかったんですか?」と聞くと、「実は仕事が忙しくてね」などと話をしてくれます。

「ここができていませんよ」という指摘の仕方では患者さんの信頼は得られません。患者さんが、なぜできなかったのかをしっかり聞くことが大切だと思います。

待合室に用意されている予防歯科に関する資料の数々

 

――予防歯科に対してどんなイメージを持っていましたか?

一之瀬さん

最初は単純にう蝕と歯周病の予防というイメージしかありませんでした。

前原さん

学校では『これからは予防の時代』というのを特に言われたわけではなく、ここに就職した時から既に予防歯科の仕組みが確立していたので、「この医院では予防歯科が大事なんだな」と考えていました。

一之瀬さん

ここに来た時には、既にカリエスリスクテストもPMTCもやっていました。熊谷先生がカリオロジーの本を出された際のセミナーに院長が行って、その後すぐに予防歯科を導入したようです。

入社して1年目の時に行ったカリオロジーのセミナーで、スウェーデンの歯科衛生士さんが講演をされていました。その方の一ヶ月のメインテナンスの人数は、なんと300人。すごく印象的でした。

「私、この方みたいになります!」と勢いで言ったのを一緒にいた院長はよく覚えているようです。ところが、まだ100人はいっていません。17年経っても3分の1以下なので、途中でフェードアウトされた患者さんは多いと思います。

――前原さんは学生時代とのギャップで何か感じたことはありますか?

前原さん

私自身、小さい頃から歯科医院にはあまりお世話になることはありませんでした。そのため、歯科医院は歯が痛くなってから行くものだと思っていました。それが、今のお子さんは何もなくても来院されます。内心「悪いところは何もないのだけど・・・」と思っていました。親御さんに「この子に虫歯を作りたくなくて」と言われた時に「エッ」って思いました。子どもの虫歯を真剣に考える時代なのだと、すごく驚いたのをよく覚えています。

一之瀬さん

自分と同じ苦労を子どもにさせたくないという方は多いですね。こういう子どもが親になって、自分の子どもも健康にしたいって思うのではないでしょうか。そのような人が増えたら、健康がずっと続く気がします。

 

セルフケアでのポイントは、リスクに合わせた提案をすること

――予防歯科ではセルフケアが大切なポイントですが、患者さんにセルフケアを継続してもらうポイントは何だと思いますか?

一之瀬さん

口腔内の状態を患者さんに理解してもらうことだと思います。つい最近も新人さんから「子どもの口腔内を見る時にどこから見れば良いですか?」という質問をされました。小学4年生と中学1年生の患者さんだったのですが、その新人さんにはその年齢のリスク部位について話をしました。

全体を見ることも大切ですが、全体をきれいにすることに100%の力を注ぐよりも、リスクが高い部位に注力した方が歯の健康は守れると思います。特に忙しい方だと1日1回しか磨けないなど、毎食後時間をかけて磨くのはなかなか難しいです。そのような場合、時間がないからせめてこの歯だけは磨きましょうという提案をすることが大切です。

患者さんの状況をしっかり把握し、その方にリスク部位をしっかり理解してもらった上でセルフケアを提案する。これが基本だと思います。

前原さん

私は患者さんが面倒だと感じる理由をしっかり把握するようにしています。

歯磨きをしない方はほとんどいません。一番面倒だと感じているのは歯間清掃じゃないでしょうか。フロスも歯間ブラシも知っているけど、自分になぜ必要なのかまでは知らない。「歯ブラシで十分落ちているでしょ」と考えている方は多いです。そのような方に限ってコンタクトカリエスが多かったり、根面が露出してきているケースがありますが、きちんと説明をすると始めてくれる方も多いです。なかには歯ブラシは使っていないけど、歯間ブラシは使っているという方もいらっしゃいますが、リスクが高い部位がケアできているならそれでもいいのかなと思っています。

「歯ブラシを使ってから歯間ブラシを使ってくださいね」というと、歯ブラシだけで満足してしまう方も多くいらっしゃいます。そのため、「普段使っていない歯間ブラシやフロスを先にやったら忘れなくなりますよ」とお伝えすることも多いですね。

 

『柏井先生が師匠です!』(一之瀬さん)

――これからの目標やチャレンジしていきたいことは何でしょうか?

―一之瀬さん

以前に2ヶ月ほどスウェーデンに短期留学したのですが、また留学したいと思っています。医療機器学会で発表をしましたが、もう少し大きなテーマを扱うなら大学院に行く必要があると思っています。周りには歯科衛生士の業務をしながら勉強・研究を続けている方がたくさんいらっしゃいます。尊敬する歯科衛生士さんは柏井先生です。

――インプラント学会に入られたと伺いました

前原さん

一之瀬さんも含め3名でインプラント学会に入りました。といっても、まだ入ったばかりなので具体的な活動はこれからです。

一之瀬さん

最短の2年で認定を取る。そう柏井先生とお約束して入りました。

勉強することに関しては院長がサポートしてくれます。学会の日はお休みをいただいたり、費用面でもサポートしてくれるのでとてもありがたいです。

 

『歯科衛生士は健康創造型歯科医療に不可欠。自分の存在にプライドを持っていただきたい』(馬見塚デンタルクリニック院長 馬見塚 賢一郎先生)

健康創造型歯科医療というのは私が作った造語です。私が教育を受けた頃の予防とは検診に行って病気を見つけてもらう、問題がなかったら良かったねで終わってしまう、そういうイメージでした。

それが22年ほど前、聖路加国際病院の訪問看護科と在宅訪問に出た時に認識が変わりました。ターミナルケアの患者さんの口の中はものすごい状態でした。「外来を離れるとこんな状態になってしまうんだ。なんとかしなきゃいけない」と感じ、すぐに『予防』だと考えました。今までは治療・予防の順番でしたが、治療のためではなく、最初から病気の発症を未然に防いで健康を維持していく形にしたい。病気を治すより予防することが大切だということを歯科衛生士さんはもちろん、全スタッフが患者さんにお伝えできる医療機関でありたいです。

積極的に健康を維持していく教育を一番受けているのが歯科衛生士さんです。だから、歯科衛生士さんなしでは当院はやっていけません。

歯科衛生士さんには自分の存在にプライドを持っていただきたいです。職種だけで見てしまうと、歯科医師・歯科衛生士・歯科助手がいます。これは単なる立場です。歯科衛生士という職種ではなく、患者さんにとって「あなたがいなくなったら困る」という存在になって欲しいですね。

当たり前ですが、患者さんを大切にして欲しいとも思っています。歯科は痛みを抱えてくるところで怖い印象がある場所です。人として心を込めてケアをして、患者さんに病気になって欲しくないと思って欲しいですね。そうすることで指導にも熱が入りますし、患者さんの気持ちにもなれると思います。

二人とも臨床をやっている時が一番輝いているので、知識や技術だけでなく、この良さを後輩にも伝えていって欲しいですね。

 

まとめ

馬見塚院長、一之瀬さん、前原さん、お忙しい中ありがとうございました!

今回のインタビューで感じたことは、「患者さんと呼ばれる前にお会いして、健康なお口の維持安定のお手伝いをする」という院長が提唱する健康創造型歯科治療の理念がスタッフさんにも行き届いているということでした。

馬見塚デンタルクリニックさんでは、さまざまなイベントを開催して予防の大切さを一般の方に啓蒙する取り組みを実施されています。

また、勉強にもとても熱心で、さらに上のステップを目指していることがよくわかりました。本当に歯科衛生士という仕事に誇りを持っていらっしゃるのがひしひしと伝わって、終始感心してばかりでした。

これからも予防歯科に取り組んでいる歯科医院さんの取材は続きます。次回の『発見!輝く歯科衛生士さん』もお楽しみに!

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