私たちの実践!予防歯科ストーリー vol.6 ~歯科衛生士さんの魅力が活かされている『なかむら歯科クリニック』~
さいたま市南区の南浦和駅から歩くこと5分。閑静な住宅街の一角になかむら歯科クリニックはあります。
院長の中村先生は南浦和に住んで30年以上。「地域の皆さまの健康増進に少しでもお役に立ちたい」という思いで平成20年になかむら歯科クリニックを開業しました。
医院を訪問するとまず出迎えてくれるのが、医院入り口にディスプレイされているレゴブロックです。
待合室の壁には動物の歯についての掲示物やオススメの歯磨剤ランキングなどさまざまな掲示物があり、来院した方が楽しく過ごせるアットホームな雰囲気が漂う歯科医院です。
写真左から髙橋さん、岸さん、表さん、玉虫さん
今回のインタビューで登場するのは4人の歯科衛生士さん。『皆さんそれぞれ魅力あふれる歯科衛生士さん。それぞれいいところを発揮しながら患者さんの歯を守るために日々多くの患者さんと向き合っています』と中村先生はおっしゃっています。
長く患者さんに支持されているニュースレターを作成(岸 尚子さん)
もうすぐ100号を迎えるニュースレター『スマイル通信』
TBIやPMTCなどの予防業務に加え、当医院のニュースレターである『スマイル通信』の制作をしています。スマイル通信は2017年12月には100号を迎えます。毎月、予防歯科についての情報や季節にあった歯科の話題、新製品情報などを発信しています。
スマイル通信は月初めに患者さんが来院された際にお渡ししています。毎月楽しみにしてくださっている患者さんも多くいらっしゃって、3カ月に一度のメインテナンスで来院される患者さんからは、「私の分を取っておいてください」と言われることもあります。
「毎月作るのは大変じゃないですか?」と聞かれることもありますが、月に1回のニュースレターなので私も楽しく書かせてもらっています。患者さんが読みやすいようにイラストを取り入れて、老若男女の方が見て楽しめるものを作るように心がけています。
裏面はスタッフの近況報告のコーナーになっていて、「最近、旅行に行きました」などといった、スタッフの個人的なできごとが書かれています。そこを楽しみにしてくださっている患者さんもいらっしゃるようでとても嬉しいです。
技術の向上のために練習は欠かせない
なかむら歯科クリニックの歯科衛生士は、いろいろな状態の歯を集めて作った抜去歯の模型を各自1つ持っています。患者さんを担当する合い間の、空いた時間を使って練習するようにしています。
この模型のポイントは「本物の歯」を使っていることです。さまざまな状態の歯を使っているので、より実践に近い練習ができます。きれいに歯が並んでいる顎模型とは違い、リアリティーがあるのでスキルの向上に役立っています。
とにかく「感謝する」「褒める」ことがコミュニケーションのコツ(玉虫 奈緒子さん)
「感謝する」「褒める」ことを始めたきっかけ
患者さんとのコミュニケーションでは、「感謝する」「褒める」ということを強く意識しています。そう思うようになったきっかけは実習生への指導でした。
以前勤めていた医院でのことです。自分の知識を実習生に伝えていましたが、そのうちモチベーションを維持できない実習生が出てきました。
その時に「どうすればモチベーションを継続できるだろう」と考え、たどり着いたのが「感謝する」「褒める」ことでした。それからは「わかりやすくメモを取ってくれてありがとう」、「わからないことを聞いてくれてありがとう」という感じで、相手の行動を承認し、感謝をするようにしたところ、実習生のモチベーションが改善されました。
それ以来、患者さんとのコミュニケーションでも「感謝する」「褒める」ことを意識して、今まで以上に良い関係を築くことができています。
どんな小さなことでもとにかく感謝する、褒める!
歯科医院は怖いところだと思っている患者さんが多いうえ、初めての方は緊張されていることがよくあります。そのため、来院してくださったことに対してまず感謝をしています。
最初の問診の際、日々の歯磨きを一生懸命やっている患者さんが、結果としてう蝕になってしまったとしても、歯磨きをしていること自体はしっかり認めてあげることが大切だと思います。
子どもでもお年寄りでも、年齢に関係なく認められたり、褒められたりしたら嬉しいものです。
小さい子どもの患者さんは歯科医院を嫌がることが多いですが、ぬいぐるみを使用してコミュニケーションをとれば、ほとんどの場合笑顔になります。最後に頑張ったご褒美でガチャガチャをプレゼントしているのですが、かなり喜ばれています。
食生活指導で小さくてもいいから患者さんに気づきを与える(表 菜々穂さん)
食生活指導:朝食はパンを食べるか、ご飯を食べるかで全然違う
歯科衛生士として食生活指導に力を入れています。
間食を減らして砂糖の摂取量を減らせば、う蝕・歯周病のリスクは下がります。しかし、いきなり「甘い物をやめてください」とは言わず、患者さんには「1日1回など時間を決めて食べてください」とお伝えするようにしています。
食生活指導の勉強をしていて、あるセミナーに行った際に「朝食にパンを食べるか、ご飯を食べるかでも違う。パン食だとジャムなどを使うのでどうしても砂糖の量が多くなるのに対し、和食だと砂糖の量が少なくすむ」ということを学びました。
私自身、すごくビックリした内容だったので、早速実際の指導でも取り入れています。初診の時に「朝食は何時に食べますか?」など食事に関する内容をヒアリングするので、その際に「朝ご飯はパンですか?ご飯ですか?」とお聞きしています。子どもの患者さんの場合には、保護者の方に「冷蔵庫にはどんな飲み物が入っていますか?」という質問もしています。ジュースには砂糖がたくさん入っているので、特に水分をよく摂る夏場は必ずお聞きするようにして適切な指導を行います。
カウンセリングの際にはスライドを使いながら砂糖がプラークの原因になることを説明し、子ども向けにはクイズを用意して理解度を高めるようにしています。すると、患者さんからは「あ~、なるほど!」という反応が返ってきます。
患者さんの生活習慣などを考慮し、「週1回は朝食をご飯にしてみませんか?」などの提案を今後もっとしていきたいです。
書道5段の経験が活かされている掲示物作成
歯磨剤の人気ランキングやイベント案内などの掲示物の作成を行っています。小学校から高校まで書道をやっていたので、その時の書道5段の経験が掲示物作成に活きています。
積極的に技術の向上を図っている若手歯科衛生士さんは、子どもから大人気!(髙橋 優衣さん)
先輩から受け継がれる技術
テクニックの向上のために、空き時間があればスキルアップの練習をするようにしています。1人1つ持っている抜去歯の模型を使い、先輩の歯科衛生士さんに実技を見てもらって指導してもらいます。「ここの手が浮いているよ」など細かく指導してくださるので、とてもありがたいです。顎模型だと形が決まっていますが、本物の歯は形が均一ではなくいびつだったりするので、スケーラーを入れる感覚も全然違います。
超音波を使用したスケーリングや口腔内写真撮影なども、先輩に練習台になってもらうことがあります。実際の感想をフィードバックしてもらえるのがとても貴重な経験です。
子どもから人気の秘訣は「きっかけ」作りのうまさ
子どもの患者さんの場合は、いきなり指導をするのではなく、仲良くなる工夫を最初にしています。やはり歯科医院は怖いところだと思っていることが多いので、怖さを感じさせないよう意識をしています。
たとえば、朝の子ども向けアニメ番組をチェックして「このキャラクター知っているよ!」という話や、「学校の給食なんだった?」「どんな授業があった?」といった切り口で、まずは距離を縮めていきます。
思春期のお子さんであれば、中学校1年生には「部活はなにやってるの?」といった質問や、中学校3年生であれば「受験はどう?」、他には好きな芸能人の話などでとにかく会話することを心がけ、患者さんとの関係を築いています。
患者さんとの距離が縮まると、私の指導に対する患者さんの反応も良い方向に変わっているように感じています。やはり、仲良くなってからの方がしっかり話を聞いていただけている実感があります。
地域に根ざしたフレンドリーな『なかむら歯科クリニック』(院長中村 篤史先生)
予防歯科に取り組むきっかけ
なかむら歯科クリニックは平成20年に開業しました。平成11年に大学卒業後、勤務医として診察している頃から「治療だけではなく、う蝕や歯周病を予防していくことが大切だ」という思いがありました。
あるタイミングで『CHP研究会』という歯科の勉強会に入ったことが予防歯科に深く踏み込むことに繋がりました。CHP研究会に属している埼玉の歯科医院の先生方と月1回勉強会を行っていますが、その際に予防を一生懸命やっている先生方から多く刺激を受けたのが一番のきっかけです。その先生方と相談して、年に数回著名な先生をお呼びして、セミナーの開催をしてもらっているので、スタッフと共に参加し勉強しています。
歯科衛生士さんに期待すること
最後になりますが、私から4名の歯科衛生士さんたちへの一言です。
・岸さん
医院全体を見渡してくれてとても頼りになる歯科衛生士さんです。患者さんとのコミュニケーションも上手く安心して任せることができます。
・玉虫さん
患者さんに感謝をする・褒めることで患者さんのやる気を引きだすのが上手な歯科衛生士さんです。子育て中の保護者の方からの信頼も厚いです。
・表さん
持ち前の明るさで患者さんとコミュニケーションをとることが上手です。院内の掲示物を作るのがとても上手で、いろいろと作ってもらって助かっています。
・髙橋さん
子どもの患者さんと接するのがとても上手で、子どもの患者さんから人気がある歯科衛生士さんです。
歯科衛生士さんは患者さんとの信頼関係が大切です。患者さんにただ“ここを磨いてください”ということだけでは状況はなかなか改善しません。それぞれの患者さんのお口の不安や健康への想いをじっくり聴き個々にあったサポートをしていくことが重要です。“あなたがすすめてくれるのなら、この方法をやってみようかしら”というような関係性を築いていき、末永く患者さんとお付き合いしていって欲しいと思います。