歯周病ケアには欠かせない殺菌剤の違い
歯周病ケアで重要なことは、細菌コントロールです。
ひとえに「細菌」といっても「バイオフィルム」と「浮遊細菌」の2種類があり、それぞれ歯周病ケアに密接な関わりがあります。
バイオフィルムと浮遊細菌を一気に殺菌することができれば理想的ですが、現実的には両方に効果的な殺菌剤はありません。
そのため、患者さんの状態に応じて殺菌剤を使い分けることが大切です。
今日は、『歯周病ケアには欠かせない殺菌剤の違い』についてお伝えします。
歯周病ケアでよく使われる殺菌剤とは?
殺菌剤にもいろいろな種類がありますが、歯周病ケア製品でよく使われる殺菌剤としては「IPMP(イソプロピルメチルフェノール)」や「CPC(塩化セチルピリジニウム)」、「CHX(クロルヘキシジン)」などがあります。
これらは、それぞれ次の特徴があります。
IPMP“だけ”がバイオフィルムに対してよく効く
IPMPは、O-157を始めとした広範囲の菌に対する殺菌効果が高く、安全性や環境にも優しい成分です。皮膚刺激もほとんどなく、消毒液などの医薬品・ニキビケアなどの医薬部外品・制汗・防臭化粧品などに広く使われています。
IPMPがバイオフィルムに効果的なことは先ほどご紹介しましたが、実はIPMP“だけ”がバイオフィルムによく効きます。
その理由は、IPMPだけがバイオフィルムの内部まで浸透するからです。CPCなどの殺菌剤はバイオフィルムに浸透できず殺菌効果をうまく発揮できないことがわかっています。
ただし、IPMPをただ入れれば良いというわけでもない
歯周病ケア製品の中にはIPMPが含まれたジェルがありますが、あるメーカーさんに聞いたところ、ただIPMPを入れれば良いというわけではないそうです。
私は「殺菌剤をたくさんいれればよく効くのかな」なんて思っていましたが、そうカンタンではないようです。適切な量・他の成分との適切な組み合わせがあるそうですよ。
メーカーさんはそういったところでじっくり研究をされているのだなと、とても勉強になったお話でした。
CPCは“低濃度から”浮遊細菌に対して優れた殺菌効果がある
CPCやCHXはバイオフィルムに対しては浸透できず殺菌効果がほとんどありませんが、浮遊細菌に対しては効果があります。
特にCPCは50 ppm(0.005%)といった低濃度から優れた殺菌効果を発揮するのが特徴です。
そのためCPCは洗口液に配合されていることが多く、口腔内全体の浮遊細菌を殺菌するのに向いています。
まとめ
歯周病ケアで外すことのできない細菌コントロール。細菌にはバイオフィルムと浮遊細菌の2種類があり、それぞれの細菌に有効な殺菌剤の違いを理解する必要があります。
・バイオフィルム ⇒ IPMP(イソプロピルメチルフェノール)
・浮遊細菌 ⇒ CPC(塩化セチルピリジニウム)、CHX(クロルヘキシジン)
患者さんの歯の状態から、「今の患者さんに必要なのはどの殺菌剤か?」を考えて製品を選ぶことが大切です。
歯磨剤・ジェル・洗口液などをおすすめするとき、ぜひ参考にしてみてください。