やわらかい毛先の歯ブラシなのに、毛の硬さが「ふつう」と表示されることがある理由
「やわらかい毛と思って採用した歯ブラシ。よく見るとパッケージには硬さが『ふつう』と書いてあります。どちらが本当なんですか?」
実はこの質問、たびたびいただくことがあります。
やわらかいのに「ふつう」となってしまうのは、「メーカーの基準」と「法律による基準」の2つを記載しているために起きる現象です。
今日は、「なぜ、やわらかい毛先の歯ブラシなのに硬さが『ふつう』となるのか?」についてお伝えします。
「メーカーの基準」と「法律による基準」
「やわらかい毛先の歯ブラシなのに硬さが『ふつう』」となるのは、実際の使用感と法律による表示の2つの記載が含まれていることが原因です。
やわらかい毛先 ⇒ メーカー基準による「実際の使用感」
毛先がやわらかいかどうかというのは、メーカーが歯ブラシの品種の中で決めています。
特に歯科製品の場合、メーカーは「実際の使用感」を優先して決めています。そのため、実際の使用感で製品を選ぶ場合は、メーカーが表示している「S」「M」「H」などといった基準を参考にすると良いでしょう。
硬さ「ふつう」 ⇒ 家庭用品品質表示法による硬さの尺度
歯ブラシに必ず表示されている「やわらかめ」「ふつう」「かため」という表示は、家庭用品品質表示法という法律に基づいています。
ここでの注意点は、実際の使用感とは必ずしも一致しないということです。その理由は、毛の硬さを測定するには試験の方法が決まっており、すべての歯ブラシは以下の方法で試験を行っているからです。
1.歯ブラシの毛丈を7mmにカットする
2.圧縮試験機で座屈強度を測定する
3.測定して数値を歯ブラシの植毛面積で割る
4.下図により硬さ表示を判断する
毛の太さや植毛本数などでさまざまな用途別の歯ブラシを設計していても、上記の規定に沿って試験を行うため、実際の使用感がやわらかい「S」の歯ブラシが「ふつう」になったり、「M」が「かため」になったりするわけです。
まとめ
やわらかい毛先の歯ブラシなのに毛の硬さが「ふつう」となるのは、メーカーが実際の使用感に基づいて表示をしているのに対し、法律では一定の試験法に従って表示を義務づけていることによります。
現場では 実際の使用感を優先して、メーカー基準の「S」「M」「H」などの表示を参考に患者さんに最適な歯ブラシを選択すると良いでしょう。