患者さんが進んで行うセルフメンテナンスのポイントを解説【予防歯科実践セミナー(講師:加藤正治先生、片山章子先生)】

患者さんが進んで行うセルフメンテナンスのポイントを解説【予防歯科実践セミナー(講師:加藤正治先生、片山章子先生)】

2017年10月29日、アーバンネット神田カンファレンスにて「セルフメンテナンス推進プロジェクト第一弾」のセミナーを開催いたしました。今回お招きしたのは、ケア型チーム医療とセルフケア処方を提唱されている高輪歯科の加藤正治先生と、歯科衛生士の人材育成に注力されているフリーランス歯科衛生士の片山章子先生です。『ドクターと歯科衛生士が共有したい「セルフケア処方」導入のプロローグ』をテーマにお話しいただきました。

当日、東京には台風が接近して大雨となりましたが、80名を超えるドクター、歯科衛生士さんが集まり熱心に聴講されました。また、このセミナーの模様は札幌にネット中継され、札幌にも35名のドクターと歯科衛生士さんが集まりました。サブスクリーンに常時先生方の姿も映されて先生方が札幌にもいるかのような臨場感があったようです。今の時代はこんなこともできるのですね。

 

一人ひとりに合った製剤・ツールの「処方」が、予防歯科のポイント

まず、加藤先生がセルフメンテナンスのポイントと取り組み方についてお話ししてくださいました。

予防歯科は、患者さんの検査結果や背景をもとに予防プログラムを組み立てますが、ここに「処方」を取り入れることで、予防歯科を効果的に進めていくことができると加藤先生はおっしゃいます。

■予防歯科(Prevention)を支える要素(3P)

・患者さん個人の情報(臨床データやセルフケア状況、背景など) Person

・プロケア、セルフケアの内容 Program

・セルフケアアイテムの処方(歯磨剤や歯ブラシ・歯間ブラシなど) Prescription

患者さんのパーソナルデータに合わせて、適切な製剤やツール(歯ブラシや歯間ブラシなど)、用法・用量を処方すれば、患者さん自身が無理なくセルフケアに取り組め、その効果を感じることによりセルフケアを継続できるようになります。結果として、プロケアの効果を維持できることにつながるのです。

また、処方の意味を調べると「医師が患者の病状に応じて、薬の調合と服用法を指示すること」とあることからも、セルフケアアイテムの選定やアドバイスを歯科衛生士任せにしてはいけない、ドクター自身も診断し、処方を導入することが重要 なのだと教えていただきました。

 

適切な「処方」を行う準備は整っていますか?

歯科衛生士国家試験では、患者さんの口腔内の状態に適切な歯磨剤の成分を選ぶという問題が出題されます。試験では回答を選択肢の中から選びますが、実際の診療では選択肢はありません。そのため、どのような口腔状態のときに、どのような成分が必要になるのかを判断するため、製品の知識や選択方法、実例を身につけていくことが大切です。

加藤先生からは「これだけは覚えたい成分ランキング」を教えていただきました。

・脱灰に対する成分処方は?

・歯石ステインに対する成分処方は?

・細菌に対する成分処方は?(さらに、浮遊性菌には?バイオフィルム構成菌には?)

など。

加藤先生の医院では、医院で取り扱っているセルフケア製品の有効成分や特徴を把握した上で、【処方のパターン】を全てのスタッフで共有しているそうです。

医院ごとの「オリジナル処方パターンの作り方」も教えていただくなど、非常に実践的な加藤先生のアドバイスに対して、参加されたドクターが深く頷く様子も見られました。

 

【実習】歯ブラシと歯磨剤の組合せで清掃力がどう変わる?違いを比べてみよう

実習では、黒いアルミホイルに2種類の歯磨剤をのせ、2種類の歯ブラシを使って30秒間 のブラッシングをして清掃力を比べてみました。結果、アルミホイルが傷つかずほとんど変化がないものもあれば、黒いアルミホイルがだんだん薄くなっていくものもあり、違いがはっきりとわかりました。

実習から、清掃力は歯磨剤と歯ブラシの組合せで変わることがわかります。上手に磨けていない患者さんには、歯ブラシを変えればよいのか、歯磨剤を変えればよいのかを考えるヒントになります。また、処方をするときも清掃力への影響を考えながら、組合せを選ぶことが大切なのですね。

 

セルフメンテナンスを広めても、患者さんが減ることはありません

患者さんがセルフメンテナンスできるようになると、さまざまな口腔疾患のリスクが減り歯を長く維持できるようになります。なかには、患者さんが減るのではないかと心配されるドクターもいらっしゃいますが、そうではないそうです。セルフメンテナンスができる患者さんが増えると、メンテナンスに通う間隔が長くなったり、1回のメンテナンス時間が短くなったりするので、それだけ新規・重症の患者さんを診ることができるようになります。結果として、予約がいっぱいで断るようなことを防いで、多くの患者さんを受け入れることができるようになるのだそうです。

 

患者さんに合わせたセルフケア処方

続いて、歯科衛生士の片山章子先生より、事例をご紹介いただきながらセルフケアのポイントをお話しいただきました。

片山先生は以前、「マニュアル化してどんな患者さんにも同じ処方、同じケアをしてしまっていた」そうです。ところが、口腔内環境の改善が見られない患者さんもいたため、その時に「なぜなのだろう」と疑問に思われ、ご自身の誤りに気づかれました。その後、患者さん一人ひとりに必要なケアを行うように変えたところ、改善が見られるようになりました。一人ひとり患者さんの状態は異なります。それぞれの状態に合わせなければ、せっかくのケアも効果が薄くなってしまうため、しっかりと見極める知識が必要ということを教えていただきました。

 

患者さんが進んでメンテナンスする力をつける秘訣とは?

片山先生が実際に行ったケアの方法やポイントを、ケース別にご紹介いただきました。事例は、歯肉の傷がある例、プラーク性の歯肉炎がある例、う蝕リスクが高い例などです。いずれの場合も、「否定せず」「患者さんが日常できることを考える」ことが大切なのだとアドバイスをいただきました。患者さん自身が、歯の大切さとメンテナンスの重要性に気づいていただくことが、モチベーション維持につながるそうです。

 

『患者さん一人ひとりに合わせた処方を考えやすくなりました』

ご参加いただいた方々の感想の一部をご紹介いたします。

《ドクターからの感想》

『長く通院しているのになかなかカリエスがなくならない患者さんがいて、その方に合わせたメンテナンスを提供できていなかったと反省しました。長く通院してくださる方にこそ実践したい内容でした』

『歯ブラシ、ペーストの処方根拠が学べ、自分の知識不足を反省するとともに、処方をしっかり学び直そうと思いました』

『患者さんのモチベーションを上げることが悩みです。先生方も同じように悩まれていたので、実例はとても勉強になりました』

《歯科衛生士さんからの感想》

『歯磨きが全てだと思っていたのでプレッシャーを感じていました。歯磨きは100%でなくてもよい、それを補う歯磨剤の処方をするべきという先生の言葉に安心しました』

『同じカリエスや炎症でも、一人ひとり生活や口腔内の状況は違うので、何を優先して考えたらよいか、日々悩んでいます。それぞれの場合について確認できたので、成分などがスムーズに考えやすくなった気がします』

『処方パターンを紙にまとめておくというのは当院でも実施したいです。当法人の歯科衛生士は20人いますが、これなら個人の知識や力量に差が出にくい仕組みが作れるのではないかと感じました』

たくさんのご好評の声をいただきました。セミナーにご参加いただき、ありがとうございました。

 

『セルフメンテナンス推進プロジェクト』では、歯科医院が受診者のセルフケアを積極的にサポートすることによって、最終的にセルフメンテナンスで健康維持していける方を増やすことを目標にしています。今後もドクターと歯科衛生士さんを対象としたセミナーを開催する予定です。ぜひ、皆さまのご参加をお待ちしております。

 

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