歯科疾患実態調査から見る歯科の実際 ~子どものう蝕は減少も、大人のう蝕は増加~
「歯科疾患実態調査」はご存じでしょうか?厚生労働省が歯科保健の状況を把握し、今後の歯科保健医療対策を推進するための基礎情報を得るために5年おきに実施されている調査です。
この調査を読み解くと、歯科の現状がとてもよく見えてきます。今回は、歯科疾患実態調査の中から「う蝕」にフォーカスを当ててご紹介します。
80歳で歯が20本以上残っている人は、2人に1人!
厚生労働省が1989年(平成元年)から推進しているのが、「80歳になっても自分の歯を20本以上残そう」という「8020運動」です。20本以上の歯があれば食物の咀嚼が容易であるとされているため、20本という目標が設定されたといいます。
20歯以上を持つ人はいずれの年齢階級においても回を重ねるごとに増加傾向にあります。
8020達成者も年々増加しており、今回の調査では達成率51.2%と「2人に1人」が8020を達成するに至りました。男女別で見ると、男性のほうが20歯以上保有している割合が高いというデータもでています。
子どものう蝕は減っている一方、大人のう蝕は増えている
う蝕について見てみると、子どもと大人で差があります。子どものう蝕は減り、5歳以上15歳未満のDMFT指数は、近年顕著な減少傾向を示していることがグラフから読み取れます。
大人においてもDMFT指数はやや減少傾向を示しています。
ただし、う歯を持つ割合は特に65歳以上の高齢者で増加傾向なことがわかります。
う蝕予防に効果的なフッ化物洗口については改善余地あり(若年層データ)
1~14歳における調査でフッ化物応用の経験者はそれぞれ次のような割合でした。フッ化物配合歯磨剤の普及割合は比較的高いものの、洗口液の普及率はまだまだ低いといえそうです。
・フッ化物塗布:62.5%
・フッ化物洗口:13.4%
・フッ化物配合歯磨剤:62.3%
まとめ
データをひも解くことで、歯科の現状について感覚ではなく正確に把握することができます。
8020達成者が増えている一方、高齢者のう蝕は増加しています。
歯が残るということは、一方で根面う蝕などのリスクが高まるということでもあります。そのため、高齢者においては根面う蝕用の歯磨剤を使うなど、しっかりとした対策が必要とされます。
う蝕罹患率の更なる低下のためには、やはり、患者さん自身のモチベーションを高め、セルフケアをしっかり行っていただくことが今後もポイントとなりそうです。