私たちの実践!予防歯科ストーリー vol.7 ~尊敬する先輩に学び、日々成長し続ける「大野歯科クリニック」の歯科衛生士さん~
東京都 池袋駅東口から徒歩3分。旧豊島区役所を中心に再開発が進み、道路の反対側では30階建てのビルを建設中という場所にある大野歯科クリニックさん。平成元年に池袋で開業し、平成6年に現在の場所へ移転してきました。
入り口をくぐれば全体的に和の雰囲気が漂い、とても居心地の良い院内。壁には30年来通われている患者さんが撮影した素敵な写真が展示されており、待合室で待っている患者さんを癒してくれます。
池袋という土地柄、患者さんには会社員の方と主婦の方が多いそうですが、口コミで広がり千葉県や神奈川県などの遠方から通う患者さんもいらっしゃるそうです。
予約は5ヶ月待ちの人気歯科医院で、現在は7名の歯科衛生士さんが働いています。今回登場するのは、インタビューを受けるのが初めてだという2名の歯科衛生士さん。頼りになる先輩のもとで日々いろいろな学びがあるようです。
完全担当制で1人の患者さんと1時間向き合っています
伊澤さん
今は多い時で午前中に4名、午後に6名の患者さんを担当しています。院長先生の方針で、患者さん1人に対し、1時間かけてしっかり歯の状態を確認するようにしています。
植村さん
患者さんによって1時間の使い方は違います。大まかな流れはこのような感じです。
最初の15分は口腔内の状態を確認して、患者さんの歯磨きが苦手な部位・プラークがついている部位をお伝えしています。患者さんの口腔内の環境にもよりますが、しっかり説明していると15分ぐらいはかかることが多いです。
次の15分でクリーニングを行います。歯石を取り、着色があればエアフローも行います。その他にポリッシングやフッ素塗布、術者磨きをしていると1時間はあっという間に過ぎています。
術者磨きは先輩からの教えで“そーっと”なでる感じで行っています。気持ちよいのか眠ってしまう患者さんも多いです。
大野院長
開院当初は患者さん1人につき30分で対応していました。ですが、それでは午前中に6~7名の患者さんの対応をするだけで歯科衛生士さんが疲れてしまいます。そのため、歯科衛生士さん・患者さんのためにも、現在は患者さん1人につき1時間にしています。
歯科医院の仕事の8割は準備だと思います。治療計画はもちろん、機材の準備、特に滅菌消毒は大切です。8割のうち40%は滅菌消毒だと言ってもいいほどです。歯科助手さんにすべてを任せるのではなく、歯科衛生士さんの業務として滅菌消毒の意識を持って欲しいです。
◆患者さんに“しっかり伝える”工夫
伊澤さん
当院の患者さんは、「○○先生に治療してもらいたい」と指名で来院される意識の高い方が多いので、私たちも患者さんに話がしやすいです。
『歯科疾患管理に関する説明書』というのを患者さんにお渡ししています。「プラークが残っているのはここですよ」と患者さんにわかりやすいように記入しています。他にも、用紙の裏面に患者さんへのアドバイスをサッと書いて「これを鏡の前に貼っておいてくださいね」と提案することもあります。
当院では「フロス・ファースト」を提案しており、必ずフロスの使用をおすすめしています。ただやってくださいと押しつけるのではなく、「歯を残したい気持ちはどれぐらいありますか?」といった質問を交えて患者さんのやる気を引き出しています。
紙面の内容は3ヶ月に1回、院長先生が替えています。患者さんが自宅に帰って読んだ時に理解が深まるような内容になっています。
植村さん
「歯周病」という単語はわかるけれど、内容は知らないという患者さんは多くいらっしゃいます。時間があれば説明用のパンフレットや個人のレントゲン写真を使って一から歯周病について説明しています。
大野院長
説明用のパンフレット、患者さんごとに特化した治療計画・模型・口腔内カメラを使って説明するのがいつもの流れです。ですが、最終的には患者さんに対する「情熱」だと思っています。
植村さん
歯周病の治療は歯科衛生士のプロケアだけでなく、患者さんのセルフケアも必須です。だからこそ患者さんにお伝えするタイミングも大切だと考えています。
1回で全部を説明するのではなく、患者さんのお口の状態に合わせて徐々に内容をお伝えしていきます。
伊澤さん
「これをやってください」とただ言うのではなく、患者さんの要望も聞いた上でやって欲しいことを伝えるようにしています。これが患者さんにセルフケアを続けてもらうカギだと思っています。
大野院長
伊澤さんは定期検診に来た人に「磨けていますね」ではなく、「あっ、嬉しいです」「上手ですね」と共感の感情を伝えているのをよく見かけます。患者さんばかりにフォーカスするのではなく、歯科衛生士としてどう感じているのかを伝えるのは非常に良いやり方だと思います。
◆歯科衛生士としてもっともっと成長したい
伊澤さん
院長先生が治療をされている際、口腔内環境が非常に悪化している患者さんに対して、「当院にはあなたのお口を治せる優秀な歯科衛生士さんが2人います」と伝える場面があります。その中の1人に私も入りたいです。
SRPや歯周病のケアをできる歯科衛生士としてもっと成長し、今後は重度の歯周病も任せてもらえる歯科衛生士になれるよう頑張っています。
また、ゆくゆくは「認定歯科衛生士」の資格も取りたいと思っています。ですが、「絶対に資格が欲しい」ということではなく、先輩から学び、実力をどんどんつけて患者さんのお役に立ちたいという気持ちが強いです。
植村さん
SRPや歯周病の治療に関しては、この先もっと大切になってくると考えています。まだまだ経験が浅いので先輩の姿を見て学び、経験を増やすことでしっかり対応できるようになりたいです。
先輩に勧めてもらったSRPに関する本を読んで勉強していますが、それ以上に現場で先輩の話を聞くのが一番勉強になります。当院は隣接ブースとのパーティションがすごく高いというわけではないので、隣で業務をしている先輩の姿が見えます。
「どういう言い回しをしているのだろう」「どのような話し方をしたら患者さんが納得できるだろう」といったことを考えながら、先輩の話を参考にして話すようにしています。
先輩から直接指導してもらうこともあります。先日はストロークを見ていただき、「このやり方ではここが腱鞘炎になる」と指導を頂きました。自分のクセになっていることがあるので、先輩に見てもらうことはとても良い気づきになります。
◆大野院長が歯科を目指した理由、予防歯科に取り組んだ理由
大野院長
私の姉が歯科技工士、義理の兄は歯科医師で、2人が情熱を持って仕事をしていることに大きな感銘を受けたのがきっかけです。
私は小さい頃からモノづくりが好きで、絵を描くより彫刻が得意でした。歯科はそれを活かせる仕事だと思いました。
点と点が線になるという話をよく耳にしますが、歯科は色々な分野のことが最終的に繋がっていく仕事だと考えています。他の分野を巻き込むことができる仕事なのですごく楽しいです。
予防歯科で有名な先生の勉強会に参加していたこともあり、当初から予防歯科を実践しようと決めていました。実際、欧米では予防歯科がかなり進んでいるので、時代の流れで予防歯科の時代が来ることは明らかだったこともあります。平成6年に現在の地へ当院を移転したときに、予防歯科というコンセプトにしました。
現在、当院の患者さんのうち半分ほどはメインテナンス目的で来院されます。6台あるチェアのうち3台はメインテナンスで使用しています。
◆『国民の健康を支える歯科衛生士さんの仕事の需要はさらに高まります』
大野院長
伊澤さんは、すべてをこなすオールラウンダー。時には送別会でダースベイダー役もこなします。
患者さんに手描きでフロスや歯間ブラシの指導をするなど、患者さん一人ひとりオーダーメイドのサポートをしています。
植村さんは、時間があれば昼休みでも本を読んで勉強しています。シャープニングも熱心に取り組んでいます。卒業一年目からインプラントチームに入り、責任をもって仕事に向かっています。
今後、将来の国民の健康を支えていくのは歯科衛生士さんです。これからは今まで以上に欠かせない仕事になっていきます。
伊澤さん、植村さんは、ゆくゆくは結婚して家庭を持つと思いますが、歯科衛生士さんの需要はますます高まります。より一層実力を身につけ、一生この仕事に関わって周りのみんなを幸せにしてあげてください。