私たちの実践!予防歯科ストーリー vol.2 ~予防・口腔ケア専門の分院を持つエムズ歯科クリニック~
『予防歯科は時代の必然』
これは、今回取材で伺った東京都中野区に予防・口腔ケアクリニックを持つエムズ歯科クリニック理事長荒井昌海先生のお言葉です。
今でこそ流れができてきたということですが、予防・口腔ケアクリニックの立ち上げ当初は理事長先生・歯科衛生士さんともに、さまざまな苦労があったそうです。
そんな苦労話も含めてまばゆい笑顔で語ってくれたのが、今回ご紹介する歯科衛生士の高田麻央さんです。
『私が歯科衛生士になったのは、母のアドバイスがきっかけでした』(高田麻央さん)
――歯科衛生士歴と、現在の仕事内容を教えていただけますか?
私は歯科衛生士歴8年で、学校を卒業後、エムズ歯科クリニックに就職しました。
現在では、マネージャーとして、患者さんの対応はもちろんのこと後輩の教育まで任されています。
――歯科衛生士を選んだのは、何かきっかけがあったのですか?
私が歯科衛生士になったのは、母の影響が大きいです。
母は技工物の配達の仕事をしていました。母は人と仲良くなるのがとてもうまく、出入りしていた歯科医院の歯科衛生士さんを私に紹介してくれました。
それが、私が『歯科衛生士』という仕事を知るきっかけでした。
歯科衛生士は女性も活躍することができ、SNSなどで調べてみても非常にやりがいがある仕事だと感じました。
そのため、進路を決める段階では歯科衛生士以外の候補は浮かびませんでした。
「歯磨きをすると高田さんの顔が必ず浮かぶ」と言われます
――歯科衛生士の仕事をしていて良かったと感じるポイントは何でしょうか?
患者さんとのコミュニケーションの中で、信頼関係を築けたと感じるときはとても嬉しいです。
3ヶ月に1度来院されるある患者さんには、「歯磨きをすると高田さんの顔が必ず浮かぶ」と言われます。時々、怒っている私の顔が浮かぶこともあるんだとか。私、怒らないんですけどね(笑)
患者さんの中には、歯磨きの仕方を教えてもらうのは初めてという方もいらっしゃいます。
歯磨きは毎日のことなので、プライベートのことが全くわからない状態では指導がしづらいです。そのため、家族の構成や仕事など、ライフスタイルをなるべく把握するように心がけています。
聞いた内容はしっかりカルテに残しておき、次回の会話に繋げます。
ただ、あまりプライベートを聞かれたくない方もいらっしゃるので、そこは空気を読んで患者さんによって踏み込む度合いを変えています。
――患者さんとコミュニケーションをうまくとるコツはありますか?
まずは「挨拶をしっかり行う」ことです。最初の挨拶のリアクションで、患者さんの状態や前回からの変化がわかります。
定期的にお見えになっている方であれば、3ヶ月前はすごく明るかったのに、今回はテンションが低いなど、心身的な変化も感じ取っています。
挨拶に対する患者さんのリアクションがあまり良くないときは、患者さんのことを気にかけながらも、あまり聞かれたくない部分だと思うので深くは聞かず、問診票を確認しながら聞けるところは聞くといった感じで応対しています。
『後輩教育は難しいけど・・・今後もさらに力を入れたいです』
――仕事の中でどういったところが難しいと感じますか?
仕事の中でも難しいと感じるのは『後輩教育』です。
私自身も仕事を始めたばかりの頃は苦労し、悩みもいろいろありました。当時の経験を活かして、後輩にも同じ悩みがあるのではないかと思い、しっかり話を聞くようにしています。
とは言え、いきなり患者さんの指導を任せるわけにもいかないので、模型で内容を確認したり、スケーラーの管理をしたりといったところから指導しています。
指導する立場ではありますが、その都度、私も一緒に成長させてもらっています。
――臨床現場での教育の課題は何ですか?
特に、コミュニケーション教育が課題です。
「TBIをしておいて」とお願いしても、どうすればいいのか、どこから話をすればいいのかがわからない後輩が多いです。学校では指導してもらえなかった部分ですね。
モチベーションに関しても歯科衛生士である私たちだけ高すぎても患者さんとの温度差が出てしまいます。それが患者さんにとって重荷になったり、来院するのに緊張するようであっては困るので、やはりコミュニケーションは大切だと感じています。
今後は、後輩のコミュニケーション教育にさらに力を入れていきたいと考えています。
予防歯科立ち上げ時には、全スタッフの技術習得が課題でした
――予防歯科に取り組み始めた際には、どのような苦労がありましたか?
後輩指導にも繋がることなのですが、歯科衛生士の技術習得が課題でした。
クリニックの名称を「予防・口腔ケア」としているので、それだけ歯科衛生士の技術も重要視されると思っています。
せっかく歯科衛生士がたくさんいるということで来ていただいても、歯科衛生士の技術力が足りなければ患者さんに満足していただけないですし、そもそもの対応に不備があっても困ります。
――その課題はどのようにして解決したのですか?
月2回、勉強会を行って技術・知識の幅を広げています。
1回は有名な歯科衛生士の先生をお呼びして、スケーリングなどの本当に基礎的な部分から細かいところまで教えてもらっています。
もう1回はメーカーさんをお呼びして、新製品はもちろんのこと、いろいろなことを話していただく勉強会を設けています。
勉強会で知識量が増えていくだけでなく、モチベーションが一気に上がるので、すぐに実践に活かして知識・技術を吸収しています。
他にも、今年は口腔ケアを勉強するために泊まりで2週間ほど大学病院で研修する取り組みが理事長の発案でスタートしました。
大学病院で口腔ケア専門の勉強ができることは、現場でとても役立っています。
セルフケアを継続してもらうポイントは、負担をかけないこと
――予防歯科ではセルフケアが大切なポイントですが、患者さんにセルフケアを継続してもらうポイントは何だと思いますか?
それは、「負担をかけない」ことです。
無理に『歯磨きをして、歯間ブラシを使ってフロスも使って・・・』と、自分の一方通行でTBIをすることはしません。
歯科衛生士としては1回できれいになってもらいたいので本当は言いたいのですが、そこは全て言わず、患者さんのライフスタイルや状況に合わせています。
たとえば、まずは歯磨きをしっかりやってもらい、歯磨きで状態が少し良くなったら歯間ブラシやフロスをおすすめするといった感じで、2~3段階かけて重要性を理解してもらうようにしています。
『予防歯科は、時代の必然です』(エムズ歯科クリニック理事長 荒井昌海 先生)
エムズ歯科クリニックは開業13年目で、今では9医院、スタッフ数も100名になります。
エムズ歯科のMには、「心技体」をもとにしたMind(心:地域医療に貢献します)、Masterpiece(技:患者様本位の治療を行います)、Member ship(人:全てのスタッフに対して責任を持ちます)という3つの意味が込められています。
お子様からご高齢の方まで安心して治療を受けていただけるよう、親しみやすくアットホームな雰囲気を心がけた対応を目指しています。
予防歯科に取り組むきっかけとなったのは、講演先のセミナーで「予防」に関する質問を多く受けるようになり、“時代の必然”を感じたからです。
ぜひ、歯科衛生士さんには、プロ意識を高く持ち、一生の仕事にして欲しいと思っています。そして、ポジティブであって欲しいと思っています。
患者さんもネガティブな人に指導されたくはないと思います。予防はもともと歯の状態が悪くないのにしっかり歯磨きをしてもらう必要があるのでなかなか難しいことですが、ポジティブな人であれば、単純に「やろうよ!」という雰囲気で伝えられます。
後輩に指導したり、何かを新しく作ろうとするときはポジティブな人が向いていると思います。高田さんには、これからもポジティブに皆を引っ張っていって欲しいです。
まとめ
常にポジティブで明るい笑顔の高田さん、ユーモア溢れるお話をたくさんしてくださった荒井理事長先生、ありがとうございました!
エムズ歯科クリニックさんでは「予防・口腔ケアクリニック」という看板を掲げていることもあり、「健康な歯を維持したい」「以前にメインテナンスをしていたので、このような歯医者さんを探していた」といった予防に関心の高い患者さんからの問い合わせも多いそうです。
エムズ歯科予防・口腔ケアクリニックさんのように、「予防」という字が医院名に入っていると、歯医者さんに通院しやすくなる方も増えるのではないでしょうか?
予防歯科に積極的に取り組んでいる歯科医院さんの取材をまだまだしていきますので、次回もお楽しみに!!