私たちの実践!予防歯科ストーリー vol.8 ~セミナーからの学びを即実践している歯科衛生士さん~

私たちの実践!予防歯科ストーリー vol.8 ~セミナーからの学びを即実践している歯科衛生士さん~

東京都の世田谷区内を走る、地域密着の路面電車 東急世田谷線。ちょうど路線の中間あたりに位置する上町駅から徒歩2分。静かな住宅街の中に渡辺歯科医院があります。

渡辺歯科医院は患者さんの立場にたった医療を提唱しており、一言で言うならば「町の歯医者さん」。渡辺院長は校医もされていて、子どもたちに口腔ケアの知識を提供する活動もしています。

今日登場する歯科衛生士さんは山本有加さん。山本さんは歯科衛生士さんになってから7年、これまでにはさまざまな苦労・学びがあったようです。

 

先輩の歯科衛生士さんがいない!とても大変だった1~4年目

新卒で働き始めてから4年目までは本当に大変でした。常勤の歯科衛生士さんが不在だったので、教えてもらうこともできず、何をするにも手探りでした。

患者さんにどう対処していいのかもわからない、上手くいかなかったときに、他にはどのような方法があるのかも分かりませんでした。

その頃は先輩のいる医院に勤めている同級生に聞く、本を読むなどして知識をつけていきました。

先生は長い目で見てくださっていて、相談すると一緒に考え、優しく見守ってくださいました。当時はとても大変でしたが、今となってはとても貴重な経験だったと思っています。

いろいろと試行錯誤を重ね、少しずつわかるようになってきた頃にライオンの予防実践セミナーに巡り会いました。

 

「本で学ぶのと実際はやっぱり違う。セミナーはすごく参考になります」

セミナーでは、講師の先生が実際の体験に基づいて話をしてくださるので、非常に勉強になります。いつも「このような話し方があるんだ」「こういうやり方もあるんだ」などと思いながらセミナーの内容に集中しています。

ただ聞いているだけのセミナーではなく、グループワークで他の歯科衛生士さんとも話す機会があったので、横の繋がりができたのも非常に嬉しいです。

セミナーで学ぶなかで、「本で学ぶのと実際とは違うんだ」と実感しています。セミナーで学んだ内容で、すぐに活かせる部分は現場でも早速使っています。これからもどんどん参加したいと思っているので、ライオンさんにはもっとセミナーを開催してもらいたいです。

 

セミナーのおかげで製品も自信を持っておすすめできるようになりました

歯科衛生士になりたての頃は「プロだから患者さんに合った製品を一回で決めなきゃいけない」と思っていました。それがプレッシャーになって、なかなか製品をおすすめできていませんでした。

それが今では患者さんの口腔状態に合わせた製品を、自信を持っておすすめできるようになりました。

セミナーに行くようになってから、歯ブラシや歯磨剤の特長など製品について直接メーカーさんに聞くことができるようになったので、理解が深まり選びやすくなりました。また、段階的に提案する方法も学んだおかげです。

患者さんには製品についていろいろな選択肢を提示しています。「自分ではこれがおすすめ!」という気持ちを抑えて、最終的には患者さんに選んでもらうようにしています。また、患者さんの口腔内の状態が変化すれば、それに合わせて「次はこの製品を試してみましょう」と、段階的な提案も自信を持って行うことができています。

 

患者さんとのコミュニケーションのコツは「自作の業務記録」

患者さんとのコミュニケーションでは、話を引き出すことに努めています。患者さんご自身からなんでもお話ししていただけるような環境をつくるために傾聴することはもちろんですが、より深いところにある考えや思い・背景を引き出すために、さまざまな質問を投げかけるように心掛けています。

また、細かく記録を残すことも意識しています。患者さんが口腔内に対してどのように考えているのかはもちろん、お身体のことや現在おかれている状況など話されたちょっとした一言も記録しています。その時はうまく理解できなかったり、深くは聞くことができなかったことも、後日「そういうことだったんだな」と患者さんに対する理解を深めることに繋がっています。

その他にも、使ったペーストの種類やスケーラー、歯間ブラシのサイズなどの一連の流れを記録します。「こういう順番の方が良かったかな」と思うことがあれば、それも記録に残して次回実践します。TBIや会話をすることに時間を割きたいので、施術はなるべく短時間で効率良く行えるように記録を役立てています。

一番記録を残す内容はTBIについてです。指導した内容だけでなく、患者さんの感想や細かい癖も記録に残しています。業務記録を管理する表紙は自分で作りました。いつ来院して、何をしたのか、過去の購入品、家族構成、既往歴、などパッと見て分かるようになっています。

 

患者さんの“今”だけを見るのではなく、長い目で見て「種まき」をする

患者さんと長くお付き合いするのを前提に、きっかけ作りである「種まき」をしておくことが大切だと実感しています。これもセミナーで学んだことのひとつです。

1回で理解してもらえなくても、「フロスって大事なんですよ」「歯と歯の間の歯ぐきから歯周病が進みやすいんですよ」と種まきの一言を伝えることで数年後に繋がることもあります。

メインテナンスも最初はハガキを送っても患者さんがいらっしゃらないことが結構ありました。治療したら歯医者は終わりという考えの患者さんが多かったのだと思います。そこで今では、治療の初期の段階で「セルフケアが一番大切です。一度良くなっても、プラークの取れていない部分があると再発します。定期的にセルフケアの確認をすることとプラークを取るのが難しい部分は私が補います」とお伝えするようにしています。

今ではほとんどの患者さんがメインテナンスに来てくださるようになりました。ハガキを送らなくても時期になると連絡が来たり、次回の予約を自ら取っていかれることも多くなりとても嬉しいです。

 

『患者さんの立場にたった医療を』Patient Friendlyという在り方とは?(渡辺一博 院長)

Patient Friendlyという考え方は、私がアメリカのミシガン大学大学院で高度な技術の習得とともに学んだ精神です。

当時、パソコンの会社が「ユーザーフレンドリー」という言葉を使っていましたが、患者さんの立場・考え方に沿った医療を提供することをPatient Friendlyと言っていました。私は、在り方としてPatient Friendlyでいたいと思っています。

学問的にはこうすればいいという引き出しはたくさん持っています。しかし、臨床で一番大切なのは患者さんの背景です。歯科の場合、日常生活を送りながら治療をしていくというのが一般の医科と大きく違うところです。

患者さん一人ひとりが違った背景を持っているので、その人に合った指導方法・製品を提供していかないと治療は成立しません。まさにPatient Friendlyに繋がってくるというわけです。

 

「患者さんの背景を理解し、モチベーションを上げてくれる山本さんをとても信頼していますし、予防歯科には絶対に必要な存在です」

今は私が治療を行い患者さんの主訴を改善して、その次に歯科衛生士さんに口腔衛生環境を整えてもらっています。その後、また私が診ます。

山本さんは患者さんの背景を理解する能力に長けていて、患者さんのモチベーションを上げ、理解を深めてくれるんです。患者さんの理解力は応対した時間に比例します。その点、一人1時間しっかりと対応してくれており、非常に信頼しています。

予防歯科には歯科衛生士さんは不可欠です。

新たに新卒の歯科衛生士さんが入ってきました。自分で実践するのと人を指導して育てるのは、また違う体験ができるはずです。人を教え育てることでさらに成長し、一皮むけると思うのでとても期待しています。

歯科は直接的に人の生命に関わることはありませんが、長期的には人の寿命に影響を与え、特に健康寿命に大きく関係してきます。患者さんはなかなかそこまで気持ちを持つことが難しいので苦労も多いかと思いますが、今後も頑張って患者さんの疾病の予防と健康の維持に努めてください。

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