前回ご好評をいただいた「セルフケア処方」セミナーの第二弾【セルフメンテナンス推進プロジェクト(講師:加藤正治先生・片山章子先生)】
「セルフケア処方」について学ぶプロジェクトの第二弾。講師はケア型チーム医療とセルフケア処方を提唱されている高輪歯科の加藤正治先生と、歯科衛生士の人材育成に注力されているフリーランス歯科衛生士の片山章子先生です。
第一弾は、セルフケア処方の全体像や基礎について学びました。今回はその内容を踏まえつつ、実際によくある症例について処方を考えるトレーニングを行いました。
▼第一弾のレポートはこちらから
「患者さんが進んで行うセルフメンテナンスのポイントを解説【予防歯科実践セミナー(講師:加藤正治先生、片山章子先生)】」
セルフメンテナンス推進プロジェクト第二弾
テーマ:『ドクターと衛生士が共有したい「セルフケア処方」実践のためのトレーニング』
講師:加藤正治先生、片山章子先生
日時:2018年5月20日(日)13:00~17:00
会場:御茶ノ水ソラシティ カンファレンスセンター
2017年10月に開催された第一弾と同様に、今回も札幌会場への中継を行いました。札幌会場には40名の方がお越しになり、全員で加藤先生・片山先生の講義を聴きました。半数近い方が第一弾から続けて参加され、皆さまのセルフケア処方への関心の高さがうかがえました。
東京会場のスクリーンに映る中継先の札幌会場
適切なセルフケア処方を行うために「処方パターン」を活用しよう
「セルフケア処方は難しい・・・」と感じている方は多いのではないでしょうか。
「患者さんの状態に合わせた処方を行うために、“処方パターン”を用意しておくといい」と加藤先生はおっしゃいます。処方パターンとは、症状や状態に対して必要な成分や剤型をパターン化してまとめておいたものです。そのため処方パターンを見れば、患者さんの状態に合わせた製品を提案しやすくなるそうです。
また、清掃剤や殺菌剤などそれぞれの成分や特徴についても詳しく解説していただきました。それを踏まえて、各医院様で薬効成分の特徴をより活かして処方することができるのではないでしょうか。
セルフケア処方の推進に向けて活動されている加藤先生・片山先生
患者さんに納得していただくために、位相差顕微鏡を活用しよう
「患者さんにいくら説明してもセルフケアが続かない」というケースをよく耳にします。
その大きな原因は、患者さんがご自身の口腔内の状態や、そうなってしまった原因を知らないためです。そこで「位相差顕微鏡」が活躍します。
位相差顕微鏡を導入されている医院は10%程度と決して多くはありません。しかし、第一弾のセミナーで加藤先生が位相差顕微鏡についてお話をされ、参加された方から「位相差顕微鏡をどんなふうに活用したらいいのか」というご質問を多くいただきましたので、今回、特別にその具体的な活用・観察方法などを教えて頂きました。
例えば、SPT期でメンテナンスの間隔が長い時や排膿があるときなどに位相差顕微鏡を使って、患者さんに細菌や血球を見ていただきます。そうすると、しっかりと理解していただいた患者さんは自分の口腔内の状態を認識するようになるのだそうです。
患者さんは言葉で説明されるだけよりも、実際に目で見てわかる方がより変化を認識しやすく、セルフケアへの意識が高まります。
そのため位相差顕微鏡をはじめ、画像や数値・色(染出し)などで変化がわかる検査を有効に活用することで、患者さんのセルフケアへの意欲を高めていけるそうです。皆さまの医院でも、このような検査をぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
【トレーニング】症例ごとに何を処方するかを考えよう
セミナーの後半は、よくある症例について皆さまと処方を考えるトレーニングを行いました。セミナーでは、加藤先生が医院で実際に使用されている処方パターンを用意してくださり、それを参考にしながら取り組みました。
セルフケア処方を行うときは、まず一番ケアしたい内容を考え、それに必要な成分を決めていきます。次に、患者さんにとって使いやすい剤型から製剤を選び、ツールを組み合わせていきます。
トレーニングでは、出血の強い歯周病・症状安定のSPT期などの8つの症例について処方を考えていきました。
トレーニングでは先生方より回答となる処方例を解説していただきましたが、「実際の臨床では処方に正解はない」と加藤先生はおっしゃいました。但し、なぜその処方を選んだのかの理由を説明することが大切だと教えていただきました。根拠を持って処方を行う必要があるのですね。
質疑応答では、第一弾のセミナーを受けて実際にセルフケア処方に取り組まれた方や札幌会場にお越しの方からさまざまなご質問をいただきました。セルフケア処方について積極的に取り組まれている熱意が伝わってきました。
【セミナーの内容】
1.セルフケア処方を実践するための4つの環境
2.ターゲット法で覚える有効成分(脱灰、歯質、歯石ステイン、細菌、炎症など)
3.位相差顕微鏡でわかること(細菌や血球の様子を見せて原因を視覚的に示す)
4.【実習】歯磨剤と歯ブラシの組み合わせから清掃効果の違いを比べよう
5.【トレーニング】処方パターンを活用してセルフケア処方を考えよう
ドクター、歯科衛生士さんがご一緒に参加された医院様も多くありました。
「歯磨剤やツールの目的を確認できました」
今回もご参加いただいた皆さまから感想をいただいたので、一部ではありますがご紹介いたします。
《ドクターからの感想》
「処方の実践が勉強になりました。また、処方根拠の大切さを感じました」
「衛生士さん任せではダメだとわかりました。処方をあまり自分から出していなかったので、積極的に出すようにしたいです」
「症例ごとの処方の例は勉強になりました」
「歯磨剤やツールの目的を確認できました。前回は衛生士だけの参加だったので、これでさらに前進できそうです」
《歯科衛生士からの感想》
「なんとなく覚えていた薬効成分や機能成分を詳しく知ることができまた。ホームケア製品は、こんなに種類を取り揃えていないが必要だと感じました」
「一人ひとり口腔内の状態は違い、そこに至った経緯も違うので、その方に合った処方は必要だと強く感じました」
「位相差顕微鏡からの処方提案は学びになりました。また、患者さんそれぞれに適した処方パターンのプリントはとても為になりました」
「根拠のある処方を実践するために、成分や優先順位をつけて患者さんにアプローチする仕方がパターン化されていてわかりやすかったです」
「当院ではセルフケア処方を取り入れようと準備しているところなので、成分や作用について見直すきっかけができました」
「オリジナルのセルフケア処方パターンを作成中です。根拠を示せるような説明をどの衛生士もできるようにしたいです」
たくさんのご好評の声をいただきました。セミナーにご参加いただき、ありがとうございました。
『セルフメンテナンス推進プロジェクト』では、歯科医院が受診者のセルフケアを積極的にサポートすることによって、最終的にセルフメンテナンスで健康維持をしていかれる方が増えることを目標にしています。今後もドクターと歯科衛生士さんを対象としたセミナーを開催する予定です。皆さまのご参加をお待ちしております。