いざというときに備えておきたい災害時の口腔ケア対策
災害が起こって避難所生活を余儀なくされると、きちんとした口腔ケアが行えずう蝕・歯周病のリスクが高まります。それだけでなく、口腔衛生環境の悪化は肺炎やインフルエンザなどの呼吸器感染症を引き起こします。
今回は『いざというときに備えておきたい災害時の口腔ケア対策』についてお伝えいたします。
災害時の口腔ケアはどうすれば良い?
災害時には睡眠不足などで不規則になりがちな生活や栄養状態の変化により口腔衛生環境が悪化してしまいます。肺炎やインフルエンザ・風邪といった呼吸器感染症を予防するためにも手洗い・マスクとともに口腔ケアは欠かせません。
特に免疫力が低くなっている高齢者や嚥下障害を持つ方、入れ歯の方は要注意です。
歯磨き・うがいが通常どおりできることが理想ですが、水が不足している場合もあります。
水が不足している場合には、
・洗口液を水の代わりに活用する
・フォームタイプの歯磨剤を使って少量の水でうがいする
といった方法が効果的です。
もし歯ブラシを入手できない場合は、タオルやティッシュペーパーなどで歯の表面の歯垢を除去するようにします。水は十分に使えるけれど歯ブラシがないといった場合はブクブクうがいを2〜3回繰り返し行うだけでも違います。
また、口腔が乾燥してしまうと唾液による防御能が低下してしまうため、乾燥がひどい方は口腔湿潤スプレーの活用も視野に入れたいところです。
歯科医院でできる災害対策とは?
患者さんへの口腔ケア対策も必要ですが、歯科医院として災害に備えることも重要です。日本歯科医師会が災害歯科医療についての方策を挙げています。
○大規模災害発生直後の迅速な初期対応
○中長期にわたる避難生活者への対策
○地域歯科医療の速やかな復旧等の実施
※「日本歯科医師会の災害対策 平成27年10月現在」P.2より引用
その中で、事前に実施すべき目標として「災害発生から速やかな初期対応と、復旧までの継続的支援を実施するための態勢整備」が求められています。
災害時の継続的支援を実施するためにも、院内の家具・ユニットなどの固定といった基本的なところはもちろん、非常時用に歯ブラシ・洗口液などを準備しておきたいところです。
まとめ
災害時にはう蝕・歯周病予防という観点だけでなく、肺炎やインフルエンザ・風邪といった呼吸器感染症を防ぐためにも口腔ケアは必須です。
しかし、災害時には水が足りないといったこともよくあります。ふだんから災害が起こることを想定して、防災の日などの季節イベントに絡めて「防災バッグに歯ブラシや洗口液を用意しておいてくださいね」と患者さんにお伝えするのも良いかもしれませんね。