今後の歯周病治療のカギは「SPT」。SPT(サポーティブペリオドンタルセラピー)って何だろう?
SPT(サポーティブペリオドンタルセラピー)という単語を聞いたことはあるでしょうか?
今後の歯周病治療のカギはSPTだといわれています。
あるメーカーに所属している歯科衛生士さんに伺ったところ、SPTについてはなんとなく知ってはいるけど、きちんと説明できないという歯科衛生士さんは結構な割合でいらっしゃるそうです。
そんな私も、SPTについてちゃんと知ったのはメーカーの方に説明していただいたのがきっかけでした。
今日は、基礎からSPTまでを含めた歯周病治療のいろはについてお伝えします。
SPT(サポーティブペリオドンタルセラピー)って何?
SPTとは歯周病安定期治療のことで、病状安定となった歯周組織を維持するために行う定期的な治療です。それに対してメインテナンスは、治癒した歯周組織を長期間維持するための健康管理と定義されています。
SPTとメインテナンスの大きな違いは、「治療」か「健康管理」かの違いです。
SPTは単なる健康管理ではなく治療です。そのため、患者さんの歯周組織の状態を見ながら歯科医師による咬合調整や、歯科衛生士によるポケット内洗浄・スケーリング・ルートプレーニングを行います。
歯周病治療の流れとSPTの位置づけ
歯周病の治療において良好な結果を得るには、歯周病や治療について患者さんによく理解していただくことが大切です。
その上で適切な治療計画を立て、計画の内容について患者さんの同意を得てから、計画に沿って治療を進めていきます。
今まではメインテナンスとして捉えられてきた部分(図のSPTの部分)を、これからはSPTと捉えることによって治療としてプロケアで行うこと、セルフケアでは何が必要なのかを考えることがでてきます。
SPTの目的は歯周病の再発を防止すること、進行を最小限に食い止め、歯の喪失を予防・減少させるために行うものですので、プロケアを行うとともにセルフケアで行うべきことをしっかりと患者さんに指導するのが歯科衛生士の役割です。
SPTのプロケアで知っておくべき歯周組織の違い
歯周基本治療でスケーリング・ルートプレーニングを行うことで歯石やプラークが除去され、根面がなめらかになり、ポケット内が清潔な状態になります。
すると、結合組織や骨が再生する前にポケットの中を這うようにして上方から上皮が再生し、一見すると治ったようになります。
ところが、実際には上皮はセメント質にくっついているだけで非常にはがれやすい状態です。この状態を「長い接合上皮性の付着」と呼びます。
歯周病の患者さんの場合は、油断をするとすぐに付着が破壊されてアタッチメントロスが発生してしまいます。再びポケット形成が起こる前にすかさずSPTを行うことで付着部分が引き締まっていきます。
長期継続的にSPTを行うことで良好な状態を維持することができます。
SPTにおけるセルフケアはプロケアと同じくらい重要!
病状安定期の患者さんには、定期的なプロフェッショナルケアが基本となりますが、患者さん本人が行うセルフケアも重要です。
プロケアによって状態を整えた歯周環境を維持するために、毎日のブラッシングによってバイオフィルムが成熟しないようにプラークコントロールをするのがセルフケアです。
しかし、バイオフィルムが一度形成されてしまえばセルフケアでは除去できないため、プロケアの出番となります。そしてまた、セルフケアによってきれいな状態を維持してもらう。
つまり、セルフケアとプロケアはどちらか片方だけではダメで、それぞれのバランスが大切だということです。
まとめ
今後の歯周病治療のカギは「SPT」です。
SPTは歯科衛生士が大きく活躍できる部分でもあります。しかしそのためには、なんと言っても基本的なポイントをしっかり押さえておくことが大切です。
メインテナンス期とは異なり、SPTの患者さんの場合は歯肉の状態が健康なものとは異なるため、使う製品についても症状に合ったものをしっかりと選択することが必要になります。
メーカーによってはSPT期専用の歯ブラシや歯磨剤・洗口液を出していますので、チェックしてみましょう。